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理事長あいさつ

肉腫診療のつぎの時代へ

「肉腫(Sarcoma)」は幅広い年齢層の全身のさまざまな部位に発生し、その診断と治療にあたっては、正確な画像・病理診断、外科的な手術から内科的な化学療法・放射線治療まで、まさに集学的な知識と技術が必要とされる代表的な希少がんです。

肉腫に対しては、その発生部位が骨・筋肉などの主に整形外科が担当する運動器であることから、(特に骨の肉腫に関しては)世界的にも整形外科が中心となって診療と研究が進められてきました。わが国においては、日本整形外科学会の主催する学術集会のひとつとして骨・軟部腫瘍学術集会が開催され、これまでに55回以上の歴史が重ねられています。現在、わが国の肉腫の治療成績は欧米に勝るとも劣らず、手術後の局所再発率の低さ、肉腫の診断から進行期まで全体像を見通せる専門家の存在、基礎研究レベルの高さなど、日本が世界をリードしている分野も数多くあります。

しかし、医療の各分野における専門的医療水準の向上、チェックポイント阻害薬や重粒子線治療に代表される新たな薬剤や治療法の開発、後腹膜や子宮、頭頚部などこれまで注目されることの少なかった部位の肉腫への対応、さらに希少がんの領域では特に重要と考えられる国際的な協力と研究をすすめてゆくには、従来の診療科単位の診療や研究では十分対応できない場面があることも明らかになってきました。

希少がんに対する最適な医療が模索され、遺伝子パネル検査をはじめとする新たな医療が肉腫の診療にも大きなインパクトを与えようとしている21世紀初頭、その果実を最新・最適な形で患者さんに届け、さらにその先に進むためには、診療科の枠をこえた肉腫に関する集中的かつ学際的なディスカッションの場、協力のための枠組みが不可欠と考えられます。

JSTAR(日本サルコーマ治療研究学会)は2017年の創設以来、このような認識のもと、診療科や立場の違いを超えたmultidisciplinaryな学術団体として歩んでまいりました。2018年の第1回学術集会(東京)以来、毎年の学術集会への参加者および会員数は着実に増加し、わが国を代表する肉腫の学術団体として、ますます発展しています。

これからも、全ての参加者が、それぞれの視点、それぞれの立場から、肉腫の治療成績の向上という共通の目標に向かって力を合わせてゆく、自由闊達な開かれた学会を目指してゆきたいと思います。御協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

日本サルコーマ治療研究学会
理事長 川井 章

国立がん研究センター中央病院
骨軟部腫瘍・リハビリテーション科長

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